2024年1月1日に発生した奥能登地方を震源とする地震は、能登半島を中心に甚大な被害を生じさせました。被害の全容は今もわかっておらず、行方不明者の捜索も続き、孤立地区も各地に残っています。学会として、まずこの地震でお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被害に遭われた皆様に心よりお見舞いを申しあげ、現在も続く救助作業の円滑な進行と寸断されている道路やライフラインの復旧を願います。
私たちデジタルアーカイブ学会は、昨年(2023年)11月に学会大会を金沢で開催させていただき、石川県の皆様に大変お世話になりました。主会場とさせていただいた石川県立図書館をはじめとする諸施設の素晴らしさはもちろんですが、石川県全体に蓄積されてきた文化の厚み、それを継承・発展させてきた方々のご努力に深い敬意を感じてきました。
とりわけ今回、最も被害が深刻な珠洲市、輪島市、七尾市などの能登地方は、日本海を通じた交流と商業、漁業、文化の蓄積が抜きん出て豊かな地域で、多くの人が、この地域に住む人々の気骨や郷土愛に心を動かされてきました。そのような地方が、今回、甚大な被害を受けていることに胸が締めつけられるような思いです。
今後、事態は震災被害への応急対応から復興へと推移していくでしょう。その際、最も大切なことは、震災の経験や震災前の地域の記憶を後世に残していくことだと思います。振り返れば、デジタルアーカイブをめぐる多くの取り組みが、東日本大震災後の被災地で始まりました。本学会の原点のひとつも、そこにあります。今回の地震で大きな被害を受けた石川県、特に能登半島地域が、今後、どのようにこの被災や震災前の記憶を未来に継承していくか、少なくともその一部で、私たちデジタルアーカイブ学会とその会員は、できる限り被災地に寄り添い、わずかばかりでも力になることができればと願っています。
デジタルアーカイブ学会
会長 吉見俊哉