開催趣旨:
博物館資料のデジタルアーカイブにはどのような意義があり、現状どこに課題があるのか。このような問題意識から、我々は博物館デジタルアーカイブの「現在地」を議論するべく本シンポジウムを企画した。
2024年6月の第1回では主に資料を「公開する」立場から、続く2025年1月の第2回では主に資料を「利活用する」立場から議論を試みた。そして、その中で浮かび上がった問いの一つに、「博物館の資料は本来、皆に開かれたものではないか。それを博物館が自ら囲い込んでよいのだろうか」というものがある。
われわれは、これをいわゆる共有地(commons)の議論になぞらえて「コモンズ」をめぐる問題と呼び、第3回のテーマとしたい。具体的には、EUのEuropeanaにおけるコモンズ政策との比較や、文化施設においてコモンズが持つ価値、さらにはコモンズを実現するための実践などの観点から、これからの博物館が資料とどのように向き合うべきかを検討したい。
まず導入として、EUなどでガバナンスの制度設計の指針として活用される「知識コモンズ」を研究する西川開氏には、知識や情報、データに関する文脈で使われる「コモンズ」という概念やその捉え方の変遷を概説いただく。
博物館で資料の公開に携わり、文化施設がコモンズ形成に果たす役割を探究する佐々木秀彦氏からは、デジタル・コモンズのあり方として、デジタルアーカイブからデジタル事典への発展の可能性を提起していただく。
文化財資料のデジタル公開を推し進める高田祐一氏には、文化施設の予算や人員をめぐる昨今の実情をふまえつつ、限られた館内のリソースを最大限活用する観点から、資料を公開することの現実的な意義を語っていただく。
デジタル・コモンズをキーワードに、デジタル時代の文化体験を豊かにするプロジェクトに取り組む本間友氏からは、博物館でコモンズを考えるにあたって何が障害になっているのか、そしてコモンズを実現するためのデジタルの使い方を提示いただく。
「コモンズ」の持つ様々な価値に光を当てつつ、博物館の資料のあり方を改めて考えるための一助としていただきたい。
主催:デジタルアーカイブ学会
時期:2025年3月19日(水)19時~21時
場所:Zoomによるオンライン開催
登録方法:
下記URLからご登録ください(定員300名)。氏名等の個人情報は、シンポジウム事務局メンバーのみが取得し、シンポジウムの連絡のために利用いたします。
https://keio-univ.zoom.us/meeting/register/EQlxqzttTJG-BJZqXFsYZA
シンポジウムの構成:
- 趣旨説明
数藤雅彦(弁護士、デジタルアーカイブ学会理事:司会)(5分)
- 講演
西川開(筑波大学、科学技術予測・政策基盤調査研究センター)「「コモンズ」の変遷」(15分)
佐々木秀彦(アーツカウンシル東京)「デジタル・コモンズの進化 アーカイブから事典へ」(15分)
高田祐一(奈良文化財研究所)「リソースが限られているからこそ文化財情報のオープン化」(15分)
本間友(慶應義塾ミュージアム・コモンズ)「ミュージアムに集うためのコモンズ的実践」(15分)
- ディスカッション(50分)
- 事務局からのご案内(5分)