【2/4 東大本郷】デジタル公共文書の理論スキーム設定に関するラウンドテーブル

デジタル公共文書の理論スキーム設定に関するラウンドテーブル

デジタルアーカイブ(以下DAと表記)は、さまざまな情報資産をデジタル媒体で保存し、共有し、活用することを通じて、公共的知識基盤として人びとの生活を支えるものです。そして、これまでのDAの議論においては、それを実体化するものとしてのMLA(ミュージアム、図書館、文書館)を対象として考えられることが多かったように思われます。しかしながら、MLAに限らず、保存・蓄積されて公共のために利用されるべき情報は、官民を問わず、また組織か個人かを問わず、いたるところに存在しています。

一例を挙げると、政府や自治体が作成した公的デジタル情報の中には、公文書管理法の対象から外れてしまうものがあります。また、研究者が作成した未公表のデータには、公表されれば他の研究を大きく前進させるものもあるでしょう。さらに、個人が保有してきた情報や、SNS等で発信されながら保存を前提としていない情報、故人が残したデジタルデータの中にも、歴史資料や社会資料としての価値を見出せるものがあります。

他方で、これらのデジタル情報には、法律や政策、技術などの観点から、DAの対象とするためには解決すべき課題も数多く存在します。

それでは、このようなデジタル情報について、持続的・長期的に保存し、対象や時期に係るアクセス制限を考慮しつつ、いずれは広く公共のための利用につなげる社会システムを構築するにはどうすればよいでしょうか。消えてしまうあるいは紙媒体等に比べて消えやすいデジタル情報に対して、何らかの早急な手当てをすることはできないのか。

この課題を解決するために、ひとまずこれらの情報を「デジタル公共文書」という枠組みでとらえ直し、それを支えるための公共的知識基盤のあり方をデジタルアーカイブ学会としても考える必要があるように思われます。

そのための端緒として、デジタル公共文書が持つ課題を共有し、新たな社会システムが担保すべき要件を検討する機会を設定することが必要と考え、先ずはラウンドテーブルの開催を提案するものです。

<ラウンドテーブル開催概要>

今後継続的に検討していくことが不可欠と考え、今回は「第1回」として、先ずは今後のテーマ別検討の土台となる、理論分析スキームの設定の在り方を議論する。

  • 主催:デジタルアーカイブ学会
    協力:東京大学大学院情報学環「講談社・メディアドゥ新しい本寄付講座」
  • 日時:2025年2月4日(火)午後1時半~3時半(最大午後4時まで延長)
    場所:東京大学情報学環福武ホールラーニングスタジオ
    形式:15名程度の討論者による対面のラウンドテーブル、周囲に15名程度の聴講者席を設け、質疑応答による参加も可能とする。
    共同司会;福島幸宏(慶応義塾大学准教授)・田中久徳(元国立国会図書館副館長)
  • 討論テーマ
    以下の三つの観点から、「デジタル公共文書」を論ずるための分析軸を考える。
    1. 媒体の変化(紙等旧メディアからデジタルに切り替わったことにより派生した問題)
    2. そもそもの「公共」文書の範囲をどう捉えるか(官/民、公/私、機関/個人、生前/死後、コンテンツ/データ、などによる区別の妥当性・適切性の再考)
    3. 膨大なデジタルコンテンツ・データの中から選別・保存・活用するための評価・基準
  • 構成
    1. 開催趣旨説明(司会者)及び討論者自己紹介(15分)
    2. 報告(各15分×3=45分):タイトルはいずれも仮題
     古賀 崇 天理大学教授「デジタル公共文書論の理論的枠組み」
     田中久徳 元国立国会図書館副館長「制限アーカイブの必要性と戦略」
     塩崎 亮 聖学院大学教授「パーソナルDAの公共性」
    3. 討論(60分、最大90分まで延長)
  • 討論参加者
    生貝直人 一橋大学教授
    嘉村哲郎 東京芸術大学准教授
    川野智弘 弁護士
    古賀 崇 天理大学教授
    塩崎 亮 聖学院大学教授
    柴野京子 上智大学教授
    数藤雅彦 弁護士・東京大学客員准教授
    高野明彦 国立情報学研究所名誉教授
    田中久徳 元国立国会図書館副館長
    福島幸宏 慶応義塾大学准教授
    南山泰之 国立情報学研究所特任助教
    柳与志夫 東京大学特任教授
    吉見俊哉 國學院大学教授(デジタルアーカイブ学会長)