デジタルアーカイブジャパン実務者検討委員会
座長 高野 明彦 殿
2019年10月30日
デジタルアーカイブ学会 SIGジャパンサーチ研究会
(岡田一祐、大向一輝、時実象一 (主査)、福島幸宏)
- 始めに
デジタルアーカイブ学会では、国の分野横断統合ポータルとしてのジャパンサーチの重要性に鑑み、2019年9月24日に研究会「ジャパンサーチの課題と展望」を実施し、8名の登壇者と50名近くの参加者を集めて議論しました (https://digitalarchivejapan.org/reikai/teirei-07)。そこで提起されたさまざまな課題・問題点について「SIGジャパンサーチ研究会」において整理したので、これを実務者検討委員会へのさらなる意見集約の呼び水となることを期待し、提言いたします。 - 提言
- 制度的・組織的位置づけの強化
現在、デジタルアーカイブジャパン推進委員会及び実務者検討委員会によって、ジャパンサーチは構築されているが、2020年9月にはその申合せの効力が失われると理解している。これに合わせて見直しを行うこととされているが、その際に以下の検討を求めたい。- (a) 構築・運営の根拠を一層整備すること。その際、法制度化を視野に入れること。
- (b) ジャパンサーチの重要性に鑑み、十分な運営予算を充当すること。
- (c) 事務局・運営チームに、幅広く人材を結集すること。
- 評価の手法自体の検討
現状では、デジタルアーカイブの評価手法自体が未確立であり、このままでは、アクセス数やサイト滞在時間など、ポータルサイトの本質と遠い部分のみでの評価となりかねない。今後、他のデジタルアーカイブ等への規範となるよう、メタデジタルアーカイブとしてのジャパンサーチの目的や構築段階に沿った評価手法の一層の開発とその適用が望まれる。具体的には、デジタルアーカイブアセスメントツールの応用などの検討を要請する。 - コンテンツ充実の方向性について
今回の研究会では、ローカルレベルの情報の収集方法の必要性と教育分野での活用が提起された。この両者の実現のためには各地域特有の歴史・地域社会コンテンツの充実を図ることが必要である。その具体化については (4) に提言するとおりである。
ジャパンサーチの評価方法については (2) に提言したとおりであるが、その基準のひとつとなりうる利用者の満足度を高めるためには、コンテンツ数もさることながら、その質も極めて重要である。現在画像等オリジナルのコンテンツにアクセスできるメタデータ数は120万件あまり (2019/10/7現在) とされている。実際にはマイクロフィルムからデジタル化したモノクロの画像や、カラーでも解像度の低い画像が多数あり、満足度に影響を与えかねない。
この対策として、(a) 現在の連携機関に対し、より高解像度の画像を用意するよう協力を求める、(b) 絞込条件にカラーの有無、解像度についての情報も追加する、(c) 地域アーカイブなど高解像度の画像を有しているアーカイブ機関との連携を追求する、などの方策が望まれる。 - ローカルレベルの情報の収集方法の検討/地域型のつなぎ役の機能の明確化
ジャパンサーチが国の統合ポータルサイトを指向する以上、これまでの、つなぎ役に集約されていた情報をジャパンサーチが収集するという構築手法のみならず、ローカルレベルからつなぎ役が新たに情報を収集して集約し、ジャパンサーチに投入する、という活動が今後のメインになる。特に地域型のつなぎ役については、余力がない上にデジタル情報の流通に関する準備が十分整っていない、市区町村等からの情報収集を如何に行うかが、そのカギとなる。
地域型のつなぎ役の機能の明確化、特に収集にあたってローカルレベルへの積極的な支援活動に関する活動指針・スキルセット・資金充当の手段などについて検討されたい。 - 教育現場でのユースケースの充実や働きかけについて
米国のDPLA(Digital Public Library of America)では、プライマリー・ソース・セット (Primary Source Sets)という教育のための150件近いコレクションを、DPLA教育諮問委員会の主導により開発している。ジャパンサーチでも、そのようなコレクション開発が可能な仕組みを提供するとともに、歴史教育や地理・社会科教育にとどまらず、広く教育に携わる教師や大学教員、学会等と協力して、このようなコレクションの開発を支援することが望ましい。 - 海外の日本研究でのユースケースの充実や働きかけについて
今回の研究会では、海外の日本研究での活用について提言があった。この提言では、海外での日本研究あるいは東アジア研究において活用するために、英語での発信が重要であるとするものである。海外での日本研究が日本だけを主題とするのではなく、東アジア研究の一環として行われることが求められる昨今、英語のみならず中国語にも目を向ける必要性がある。また、日本研究だけに特化するとしても、「やさしい日本語」のような取り組みに目を向ける必要がある。
そのような理想の一方、どのように英語や中国語、「やさしい日本語」などに展開すればよいか、現時点で明確なわけではない。今後は、日本語に熟知した日本研究関係者(EAJS・AAS・東アジア日本研究者協議会参加者等)に協力を仰ぎ、多言語展開のありようを検討することが望ましい。
- 制度的・組織的位置づけの強化
以上