長尾前会長の挨拶 (2017)

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長尾真会長、文化勲章受章

Nagao

本年(2017年)5月にデジタルアーカイブ学会が設立されました。これを機会にアーカイブ、特にデジタルアーカイブの大切さの認識を日本全国に広めてゆきたいと考えています。

日本各地に歴史、文化、芸術、その他貴重な有形・無形の文化財はいろいろと存在し、それらは書かれた資料の形態だけでなく、写真、映像、音楽・音声の記録されたもの、また彫刻などの3次元物体表現など、さまざまな表現形式で存在しますが、これらは今日のデジタル技術で記録し、保存し、また再現することが容易にできます。こうした情報は我が国の文化の持つ世界における独自の価値が国内のみならず世界的によく認識されるのに役立つはずです。

各地に存在するこれらの貴重な資料についての喫緊の課題は、どこにどのようなものが存在するかを一元的に把握するセンターを作ることです。できればこれを国として作ることが望まれます。これまで我々はデジタルアーカイブ振興のための法律を制定し、国立デジタルアーカイブセンターを設立するよう国会に働きかけてきました。近い将来これが実現し、全国各地のアーカイブ、デジタルアーカイブ活動に適切な支援が行われ、この分野が進展することを期待しています。それは、今日政府が掲げる地方創成の原動力の一つにもなるでしょう。

デジタルアーカイブの内容としてどのような情報が整備されるべきかについては、本学会がその標準を示すことが大切です。それはコンテンツ(資料)とメタデータ(目録)の2つの領域についての標準作りです。メタデータとしては個々のコンテンツの名前、作成者、所有者などの書物における書誌的事項に対応するもののほかに、その資料の内容、来歴などの記述も必要となるでしょう。メタデータをどこまで豊富にするかによって、コンテンツの持つ価値とともにそのアーカイブの価値が定まるといってよいのです。

コンテンツについては、文書、画像、映像などそれぞれについて、デジタル化の標準規格などを定める必要があります。音楽や音声のレコーディングについても同様であり、これらについては、例えば音楽の場合は楽譜、音声記録については音声から文字おこしされたテキストなどが並行して参照できるようにすることも大切です。この考え方をさらに広げれば、関連する情報が他のアーカイブから容易に取り出せるようにリンクを張るといった仕事も必要になります。

こういったアーカイブ資料につけるべき情報、関連する情報に対するリンク付け等の仕事は訓練された専門家(アーキビスト)が行わねばならず、そのための人材育成も大切な課題となります。またこれら全国のアーカイブされた資料を利用して研究したり楽しんだりするための教育、そのためのソフトウエア開発や利用法を高校、大学の授業に取り入れられるよう働きかけてゆくことも必要です。さらにこれらの情報に関する権利関係に関しても、法律の立場から整理し明確化することが求められます。

このようにデジタルアーカイブ学会のやるべきことは山積しています。多くの関心のある方々が本学会の会員となり、この分野の発展のために尽力してくださるようお願いいたします。

デジタルアーカイブ学会会長 長尾 真

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