第1回学会賞授賞理由

◆功労賞

◆受賞者名: 角川歴彦 ( かどかわ・つぐひこ)

株式会社KADOKAWA 取締役会長
角川歴彦氏は出版界の中では極めて早くから、図書や雑誌という形式ではなく、それが含むコンテンツに注目して、メディアミックスという形式での展開を進めてきた。その点では我が国における商用コンテンツサービスのパイオニア的存在として、コンテンツ流通の重要性を社会的に広めることに大きく貢献し、政府の
知的財産戦略本部構成員としても国の関連政策形成に寄与してきた。また、東京大学に2013 年にメディア・コンテンツ研究寄付講座を設置し、東京大学におけるコンテンツ構築・デジタルアーカイブ研究のきっかけを作ることによって、デジタルアーカイブ学会設立への道を開き、2018 年に開催した本学会第2 回研究大会では基調講演及び協賛の両面で貢献した。よって功労賞を付与するに値すると思料する。

◆受賞者名: 北島義俊 ( きたじま・よしとし)

大日本印刷株式会社代表取締役会長
北島義俊氏を取締役会長とする大日本印刷株式会社は、凸版印刷株式会社等と並んで、我が国の民間レベルにおけるデジタルアーカイブ構築・展示のパイオニア的存在であり、近年のルーブル美術館と連携した3D デジタル展示は世界的にも評価されている。また同社は2015 年に東京大学にDNP 学術電子コンテンツ研究
寄付講座を設置し、デジタルコンテンツ構築やその基盤となるデジタルアーカイブ研究の展開に寄与することにより、同講座を拠点とするデジタルアーカイブ学会やデジタルアーカイブ推進コンソーシアムの設立に大きく貢献した。よって同社の一連の活動を主導した北島義俊氏に功労賞を授与することがふさわしいと思
料する。

◆受賞者名: 後藤忠彦 ( ごとう・ただひこ)

岐阜女子大学顧問、前岐阜女子大学学長
岐阜女子大学学長として、岐阜、沖縄、北海道を中心に全国の地域資料デジタルアーカイブ約20 万件や木田宏オーラルヒストリーアーカイブを整備し、デジタルアーカイブ研究所およびデジタルアーカイブ専攻を設置した。また、デジタルアーカイブ人材養成に着手し、NPO 法人デジタルアーキビスト資格認定機構を創設し、会長として約5000 人を養成した。さらに、日本教育情報学会会長として、教育におけるデジタルアーカイブ活用を推進した。

◆実践賞

◆受賞者名: 青空文庫

青空文庫は日本最大のテキスト化された書籍アーカイブである。1997 年7 月7日に、故富田倫生ら四人で始められ、20 年を経て著作権が切れている作品を中心に、15,000 点近くが電子化されている。特徴は (1) 在宅無償ボランティアによるテキスト化、校閲作業、(2) 無許諾での商用を含む自由な再利用可能、(3) 厳密な校閲による、底本に忠実で信頼性の高いテキスト、などである。公立図書館の電子図書館の蔵書の中心となり、またテキスト読み上げソフトで用いられるなど、日本の電子書籍発展を牽引してきた。青空文庫は、デジタルアーカイブにおける、(1) 市民参加、(2) 自由再利用と産業化、(3) 持続的構築、のモデルを作り上げたことを評価して表彰する。

◆受賞者名: いらすとや

「いらすとや」は自身のことを「かわいいフリー素材集」と定義しているが、その枠に収まりきらない活躍には、デジタルアーカイブを再考するヒントがある。イラストのテーマは社会のニーズをリアルタイムに反映し、時事問題のイラストには「かわいい」という形容に収まらない風刺的要素も感じられる。さらに最近
はバーチャルユーチューバーにも進出するなど、素材集の枠を大きく越えて活躍の場が広がっている。日本には江戸時代の「瓦版」のようなグラフィカルなメディアの伝統があるが、「いらすとや」は同一テイストのイラストという「統一フォーマット」で現代をグラフィカルにアーカイブする素材集という、新しいジャンルを切り開いたとも言える。その優れた実践は表彰にふさわしい。

◆受賞者名: 渋沢栄一記念財団情報資源センター

渋沢栄一記念財団情報資源センターは、渋沢栄一と実業史に関する情報資源の開発・提供を目指して、多年に渡り関連資料のデジタルアーカイブを構築している。基本資料をまとめた『渋沢栄一伝記資料』デジタル版の公開に加え、渋沢栄一関連会社を中心とする社史1500 冊を収録する渋沢社史データベースでは、著作権
に配慮して本文ではなく、目次・索引・年表・資料編等の検索や分析を可能にするなど工夫を凝らしている。また、実業史錦絵プロジェクトでは、渋沢敬三が提唱した「絵引」の手法を用いて美しい実業史錦絵ギャラリーを公開している。公開後も各種コンテンツ・機能を継続的に拡充しており、優れたデジタルアーカイ
ブの実践として表彰する。

◆受賞者名: 橋本雄太 (はしもと・ゆうた)

国立歴史民俗博物館助教
デジタルアーカイブにおいて多くを占めるくずし字資料は、日本における過去との文化的断絶を象徴するものでもあった。これを克服すべく大阪大学から公開されたくずし字学習アプリKuLA は、10 万ダウンロード超のヒット作品となり、さらに続いて京都大学よりリリースされた古地震資料くずし字翻刻サイト「みんなで翻刻」はその力をクラウドソーシングという形で500 万字超のテキストデータへと昇華するに至り、さらにその発展は継続している。デジタルアーカイブが日本文化の断絶を埋める力を持ち得ることを具体的に示したこれら二つのツールの開発に中心的に携わった橋本雄太氏の活動は、当学会の実践賞にふさわしい。

◆受賞者名: SAT 大蔵経テキストデータベース研究会

(代表:下田正弘)
デジタルアーカイブには利活用の拡大や持続可能性、横断的な連携、ライセンスなど様々な課題がある。SAT 大蔵経テキストデータベース研究会は、1994 年の開始当初より、代表者の交代をはじめとする様々な課題に直面しつつ、今もなお、約1 億字の全文検索テキストデータベースを核として最新の国際規格への対応や
一般向けコンテンツのオープンライセンス提供、国内外の機関・プロジェクトとの連携など、現代的なデジタルアーカイブの課題に取り組みつつ、学術コンテンツとして世界的に広く受容されている。約四半世紀にわたるこれら一連の活動を、学術分野におけるデジタルアーカイブの実践として表彰する。

以上

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